研究の場

この「研究の場」には

●福井大学救急部・総合診療部の業績

●災害医療・緊急被ばく医療について

●大学院のススメ

●地域プライマリケア講座について

の順で書いてあります。

学会発表

平成25年5月11日

第15回北陸小児救急・集中治療研究会(金沢:都ホテル)にて

「小児救急シミュレーションコースを開催して」という演題で山口先生が発表しました。

大学で行った初めて試みたコースの発表でしたが、会場の先生からたくさんのご意見をいただき非常に良い会になりました。

なによりも堂々と(風邪気味にもかかわらず…)発表できた先生に感謝です!スゴイ! 

災害医療/緊急被ばく医療/環境因子による身体変化

※現在準備中です。

特色ある大学院(臨床研究)

ようこそ、大学院へ!

大学院で、どんなことが学べるでしょうか?

簡単に紹介してみたいと思います。

救急で働く医師の将来とは?

まず救急を専門として働くこととは、どういうことでしょうか?救急を専門とする医師の業務は大きくいって2つあります。「救急外来を受診する患者の診療を行う」「研修医など医療スタッフのon the job trainingを行う」の2つです。後期研修医になったばかりでは学ぶことが多く、日々の業務をこなすだけでも精一杯になってしまうでしょう。しかし、数年してくると、この2つの業務は自然とこなせるようになってきます。そして、働くだけなら、その病院で働き続けることができるでしょう。でも、ただ働き続けることが、その人の医師としてのゴールなのでしょうか。

 

後期研修医のその先の課題

ある程度、通常業務がこなせるようになった救急医は、どのようなことに取り組むのでしょうか。以下のものが考えられます。

 

・研修医やコメディカルを対象とした勉強会を開催する。

・病院や地域の救急体制の強化のために、他科や病院全体、救急隊などとルール作りを行う。

ACLSJATECなどに代表されるoff the job trainingに参加し、その普及に努める。

・DMATなど日本全体の救急医療体制づくりを行う。

・病院を変えて、次の職場で必要とされることを身につける。

・アメリカなど海外にERを学びに行く。

・研究を行う。

・プライベートを充実させる。

 

 上記の2つは当教室の林先生や寺澤先生に代表されるように、その病院や地域(日本全体)の医療レベルの向上に寄与する医師として大切な活動の一つです。また、求められる救急医療は病院により異なるため、職場を変えることはその医師の守備範囲を広げることに役立つでしょう。アメリカやカナダなど海外で救急を学ぶことも、非常に良いと思います。(なお、福井大学救急部には外人講師による英会話教室や英語のプレゼン指導、USMLE勉強会など海外留学を支援するプログラムがあります)プライベートを充実させることも人間として生きる上で大切であると思います。これらの選択肢と並んで「研究」という選択があります。「研究」は他の選択肢では達成できない医師としてのskill upや、住んでいる地域や国を超えて救急医療に従事する医師と交流する手段として最適であると考えられます。それは何故でしょうか?少し述べてみたいと思います。

 

研究をすることのメリット

    論文の内容を理解できる。

「最新の論文をチェックしています。」このような人がいます。救急外来で研修医から相談された時に、「最新のNEJMで・・・だったよ。知ってた?」と切り返せる後期研修医やスタッフはカッコよく見えますよね?でも、本当に理解して論文を読むことができているのでしょうか?論文を理解して読むのと、論文を和訳するのでは少し次元が異なります。例を挙げてみましょう。

「この検査は最新の論文でNPPV (negative predictive value)98%だった報告されていた。じゃ、この検査で疾患の除外ができるね。」これは正しいですか?この情報だけでは判断が難しいですが、NPPVは母集団の影響を強く受けます。このため、この検査が実臨床で使用できる結果かどうか、よく吟味する必要があります。

coronary CTACSの除外に有用だから、救急外来にACSが強く疑われる患者が来た時、coronary CTを撮影できたら簡単に除外できるのにね。」これはどうでしょう?これは確実に間違いですね。デザインを読めば簡単に理解できると思います。

 もし、最新の知識を得たいと思った場合、最新の論文を理解して読むことが必要とされます。この「理解して読む」は、さまざまな手法があります。PICOや批判的吟味など、皆さんも聞いたことがありますよね?でも、もっとも簡単に理解する方法は「実際に論文を書いてみること」であると思います。あまり知られていませんが、論文には研究デザインごとのガイドラインが決められており、それに準じて執筆することが求められています。つまり、何がどこに書かれていて、どんな論理展開になっているか、あらかじめ決められているのです。そのガイドラインに準じていない論文は読むに値しない論文であるとも言えます。研究を通じて、簡単な統計やデザインの妥当性の評価も身につけることができます。最新論文の結果を実臨床に生かそうと考えた時に、本当に使えるのか吟味することもできるようにもなります。「研究をする」ということは、「論文を深く理解すること」に直結しており、臨床のskill upresourceを増やすことができるのです。

 

    研究を通じて、さまざまな人と交流ができる。

 もしある病院で働き続けた場合に、同じ救急を専門とする医師との交流は職場内のみになってしまうかもしれません。また、ある医局に所属した場合には、その医局内の医師のみと交流することが多いと思います。しかし、「研究」を行うことによって、その交流範囲は大きく変化します。少し個人的な話をしたいと思います。僕は研究を通じて、京都大学 初期診療・救急医学分野 医局長である西山 慶先生や Massachusetts General Hospitalの長谷川 耕平先生など様々な優秀な救急の先生方と知り合うことができました。このような偉大な先輩たちと交流させていただくことによって、もちろん自分の研究も発展しますが、「日本の救急をアカデミックにするという信念」「後輩を指導する姿勢」「社会に貢献しようとする使命感」などを多くのことを学ぶことができました。このような第一線で活躍する人たちとの交流は、僕が研究を行わないとできなかったことであると思います。

 

福井大学で学べること

当院の大学院では臨床研究を系統だって学ぶことができます。

student t検定から多重ロジスティック回帰分析などの多変量解析や生存分析まで 実際の研究を通じて身につけることができます。

・研究計画の立案から調査まで大学のサポート下で行うことができます。

・日本語、英語でのプレゼンテーションの指導を受けることができます。

・科研費などの競争的資金の応募書類作成法の指導が受けられます

・英語での論文作成や海外のジャーナル投稿ができるようになります。

 

 このように福井大学では臨床研究に必要な知識や技術を一から身につけることができます。また研究のテーマは各個人に任されており、今までの日常診療で見つけた疑問や研究アイデアをそのまま研究テーマにできます。研究と聞くと、大量のデータの入力やカルテレビューが難しいのではないかと心配になる人もいるかもしれません。この不安を解決する方法は存在します。例えばCRCclinical research clerk)を雇って、作業を行ってもらうこともできます。また、多施設共同研究にすることで大量のデータを扱うことが可能になります。当教室ではすでにCRCを導入した研究や、さまざまな多施設共同研究が行われており、研究者が研究の解析や論文作成に集中できる環境があります。

 

福井大学のカリキュラム

大学院は通常4年間と決められていますが、卒業資格を満たすことにより3年間で卒業することができます。具体的なカリキュラムは以下の通りです。

 

・月曜日と火曜日の夜6時から大学院の講義があります。

・通常の臨床を2年間、大学院生として研究に励む期間を2年間と決められています。

 (つまり大学または関連病院での2年間の義務として通常勤務+2年間自由時間) 

 

現在の大学院の講義は基礎研究の内容も含まれますが、統計学、論文作成法や競争的資金応募方法など臨床研究に必要な講義を受けることができます。また国内外から多数の有名な研究者による講義も予定しています。1年次から2年次までは大学病院や県立病院での通常勤務を行い、3年次から卒業までは大学院生として研究に専念することができます。もちろん、完全にシフト制のERを行っているため、余暇が多くあり通常勤務の期間でも研究を行えます。また研究に専念する期間でも、希望があれば通常勤務も行うことができます。ちなみに私は通常勤務の期間で論文を作成、投稿できました。私は今、研究に専念する期間としています。研究に専念する期間は通常勤務は免除されています。しかし、私は臨床から離れたくなかったため、週2~3日通常勤務を行い、週1~2日外病院の勤務、週2~3日研究日としています。このようにメリハリをつけて、臨床技術を習得し、研究に専念をすることができることも当教室の大学院の魅力の一つです。

 

なお、大学院の卒業条件は以下のように決められています。

 

    大学院の講義を規定回数出席すること

    Impact factor1以上の英文誌に2つ以上の論文が掲載されること

 

他の教室と比較して卒業に必要な論文が2つ以上というのが、少し難しいと思います。しかし、当教室の強力なバックアップ体制があり、心配することはありません。実際に私は2年次の後半で、すでに2本目の論文が作成できており、在学2年目でこの卒業規定を満たすことができています。卒業規定を満たした後の過ごし方は個人に任されています。

 

大学院卒業を通じて得られるもの

「大学院を卒業することに意味はあるのか?」多くの人がこのような疑問を持つと思います。大学院を卒業し、博士号を取ることで大学の講師などの役職につき勤務することができます。また日本の病院では博士号がないと部長職につけない病院がまだ多く存在するため、将来、病院の救急部の部長を目指す人は必要な資格となるでしょう。

 でも、本当に得られることは「臨床研究を理解し、自ら行うことができる知識と技術」であると思います。自分が救急医療に携わる中で見つけた疑問を自分の力で解決できた時のことを想像してみてください。そして、それが救急医学の発展に役立ち、世界の誰かの役に立つのです。こんな素敵なことはないですよね。もちろん、どこかの人が書いた論文を読んで解決する手もあります。でも、論文を読み込むにつれて、国それぞれで医療体制や抱える問題点が異なるため、必ずしも外国のデータが実臨床に生かせないことに気が付きます。何か疑問を見つけた時、「外国の偉い先生がこう言ってました。(でも、論文の内容はよくわからない)」という人と、「自分で・・・な方法で検討して、解決できたんだ。結果を英語で発表したら、日本のみならず海外からすごい注目されたり、感謝されたんだ。」という人と、どちらが良いでしょうか?もし、臨床研究に興味を持たれた方は、大学院へお越し下さい。ぜひ一緒に学びましょう。

 

川野 貴久

医師として8年目です。

まだまだですが、一緒に勉強しましょう

 

論文

Direct relationship between aging and overcrowding in the ED, and a calculation formula for demand projection: a cross-sectional study.

Kawano T, Nishiyama K, Anan H, Tujimura Y.

Emerg Med J. 2014 Jan;31(1):19-23.

 

Infectious Disease Frequency Among Evacuees at Shelters After the Great Eastern Japan Earthquake and Tsunami: A Retrospective Study.

Kawano T, Hasegawa K, Watase H, Morita H, Yamamura O.

Disaster Med Public Health Prep. 2014 Mar 10:1-7.

 

研究費

大和証券ヘルス財団 平成23年度調査研究助成

2012年度 科研費 若手研究(B)

平成24年度 救急振興財団 「救急に関する調査研究助成事業」

平成26年度 救急振興財団 「救急に関する調査研究助成事業」

 

臨床研究のススメ(福井大学大学院医学系研究科 博士課程 八幡えり佳)
report01.pdf
PDFファイル 219.3 KB

海外留学

地域プライマリケア講座の活動・研究

地域プライマリケア講座では、全国初の市町村単独医学部寄附講座として、高浜町の医療や地域医療システムに関することなど、以下のような研究を展開しています。
 
○福井県高浜町における地域医療教育の効果
○福井県高浜町における住民有志活動がもたらす医療満足度への効果(Action Research)
地域志向型プライマリ・ケア(Community-Oriented Primary Care: COPC)の考え方に則り、福井県高浜町の地域を設定し、その問題点を①医師不足、特に家庭医療・地域医療に特化した医師の不足、②住民の地域医療への関心・理解不足、の2つの優先的な問題に介入すべく、医学教育や住民啓発の効果を検証しています。
医学教育に関しては、高浜町国民健康保険和田診療所を拠点に、町内関連施設と連携しながら地域の生活やプライマリ・ケアの専門性(ACCCA)などを感じていただけるような研修を展開しています。夏期には「夏だ!海と地域医療体験ツアーin高浜」を開催し、地域医療研修+救護所ボランティアのイベントを開催、例年全国より学生・研修医が高浜町を訪れます。参加者の意識の変化として、地域医療の楽しさ、地域医療のより深い理解、地域医療への関心の増加、地域医療へのモチベーションの増加、の効果を確認しています。
住民啓発に関しては、2009年より住民有志団体「たかはま地域医療サポーターの会」を立ち上げ、住民→住民への理解・協力を、さまざまな方法で“地域医療を守り育てる五か条”(一、関心を持とう、二、かかりつけを持とう、三、からだづくりに取り組もう、四、学生教育に協力しよう、五、感謝の気持ちを伝えよう)を呼びかけられています。活動の開始前と2年後で、町民の有志団体の認知度、医療満足度、医療関係者のモチベーションなどの向上を確認しています。
 
○特徴的な地域住民の理想とする医療に関する探索的研究
理想の医療とは何でしょう?寿命が長い、医療費が安い、などの客観的指標で本質的に測れているのでしょうか?また、全国各地でさまざまな地域の事情がある中、共通の理想がそこにはあるのでしょうか?また、「理想」と決めるのは医療関係者や行政・疫学担当者、患者でいいのでしょうか?
そんな疑問から出発した本探索的研究では、全国の特徴的な地域(都心、地方都市、山村・漁村、離島)の主役である住民が、普段の生活の中で医療をどのように感じ、どのような理想をえがいているか、半構造化グループインタビューを用いて質的に解析し、本質的な理解の足掛かりを研究しています。都心ほど医療の内容に重心が置かれ、離島ほど生活に結びついた医療を意識していることがわかっています。
 
○在宅療養中患者における口腔ケアの発熱予防効果
高齢者が地域で長く過ごすために支障となる誤嚥性肺炎。Nursing Homeなどの入所施設では、口腔衛生の保持が発熱や肺炎を防ぐというエビデンスがありますが、在宅療養中患者においてもその効果が適応されるのか、町内で療養中の方に口腔衛生指導および器具の譲与を行い、その効果を検証しています。